あなたの走る理由を考えさせてくれる本。あさのあつこ『ランナー』感想【38冊目】

積ん読が消化されていき、最近では読む本のストックがなくなってきた管理人です。

かと言って一気読みできるほどの時間もあまりないので、サクッと読めるような本を求めています。

 

ブックオフでいい本ないかなーと探していたところ、パッと目に飛び込んできたのが、あさのあつこ先生の『ランナー』でした。

 

先生の他作品で、野球を題材にした『バッテリー』という作品を過去に読んだことがあり、面白かった記憶がありました。

「この先生の作品は間違いない」という確信と、作品タイトルの「ランナー」という文字に惹かれて購入しました。

 

内容紹介

長距離走者として将来を嘱望された高校一年生の碧李は、家庭の事情から陸上部を退部しようとする。だがそれは、一度レースで負けただけで、走ることが恐怖となってしまった自分への言い訳にすぎなかった。逃げたままでは前に進めない。碧李は再びスタートラインを目指そうとする――。少年の焦燥と躍動する姿を描いた、青春小説の新たなる傑作!

 

 

中学校時代は陸上部でした

中学生の頃、僕は陸上部に所属していました。

放課後になると毎日グラウンドに出て練習をしていました。

 

成長期のおかげか、小学校高学年になる頃に身長が増え、体もだんだん大きくなりました。

体が大きくなるのと同時期に、短距離走のタイムがぐんと上がり、中学生になったら陸上部に入ろうと決めていました。

 

中学生の頃の心境は、今でも思い返せるほど鮮明で、やや暗い思い出が残っています。

人生初の反抗期、周りと馴染めず鬱々とした気持ちで通学、環境の移り変わりに対応できずに心が崩れていくような、そんな感覚を覚えています。

 

それでも走ることをやめなかったのは、走ることが好きだったから、だけではありません。

きっと仲間たちと一緒に、何か一つのことに打ち込むことが、暗い中学校生活に打ち勝つ為の唯一の方法だったのかも知れません。

 

なんだかんだで三年間、400m走選手として活動することができました。

 

この『ランナー』という作品で描かれるのは高校生活。

主人公の碧季は複雑な家庭環境に悩みながらも、陸上競技に向き合おうと葛藤します。

 

いま思えば高校生という年齢はまだまだ子どもです。大人になりきれる人はまずいないし、言ってしまえば「まだ子どもでいるべき年齢」だと僕は思います。

碧季に与えられた家庭環境は、その「子どもでいるべき年齢」を忘れさせ、大きなストレスを与えつつありました。

 

どの登場人物も、与えられた環境に苦しんでいるようにも見えます。

無駄な登場人物は一人もいません。みなそれぞれ細かい心理描写が描かれています。

自分の高校生活を思い出して、「親は、先生は、友達は、異性は、あのときどんなことを考えていたのだろう」と、今の年齢になって考えさせられました。

それもどの登場人物に魅力があるからだと思います。

 

細かい描写がランナーの心を掴む

走ることに条件はない。ただ、肉体と大地があれば事足りる。記録も賞賛も順位も勝負も、関係ない。この肉体、この大地、それだけで全てが満たされるのだ。単純で底知れない快感が、大地から湧き上がり、肉体を抱擁する。走るとはそういうものだ。だから、走り続けたかった。

 

高校生の、複雑な心理状態を打ち消すように、主人公は走ります。

一度挫折を味わっている主人公ですが、走ることに対しては好意的で、自分が走ることに対してどのような気持ちを抱いているのか、とても伝わってきます。

 

身体が温まってくる。走り始めると、身体を取り巻くもの一つ一つがそれぞれの存在を際立たせてくる。血の流れとか、心臓の鼓動とか、気道を滑っていく空気とか、大地の感触とか風とかグラウンドの湿り気とか匂いとか、みんな競うように鮮明になり、存在感を増してくる。そして、吸い込まれていくのだ。

碧季は、身体を取り巻く全てが避難し周りに吸い込まれていく感覚に自身を委ねる。無ではない。何かがある。自分という小さな枝は、磨耗することも砕けることもなく確かに在るのだ。桜の花びらが散るように、枝に纏いついていた諸々のものが落ちていく。どんなに愛しい者のことも、深い苦悩も、胸震える喜びも剥がれ、漂い、消えていく。妹のことも母のことも、はらはらと散っていく。

走るとはそういうことだった。

 

まとめ

最後の終わり方が「あれっ?これで終わりなの?」という感じだったので、ネットで調べたのですが、続編がありました。

 

 

陸上競技に打ち込む青春小説かと思って手に取ったのですが、まさかの重たい内容でびっくりしました(笑)

そして僕の暗い学生時代の思い出も湧き上がってくることになり…この話はこのへんでやめておきます。

 

久々のあさのあつこ先生の本は、やっぱり面白かったです。

学生時代の細かい思い出をかき出してくれるような、そんな作品でした。

あと、やっぱり自分も走ることが好きだなと改めて実感しました。僕も彼らのように走り出したい。

 

それではまた!

 

 

 

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