前科者は一生苦しみながら生きてゆく?『プラージュ』感想【41冊目】

星野源が好きな管理人です。

 

逃げ恥あたりから星野源の熱は上がっているのですが、彼のエッセイ本を読み始めてから本格的に好きになりました。

好きとは言っても、ライブに足を運ぶわけでもなく、CDはレンタルしているのでガチファンではありません。ただエッセイ本をすべて読むくらいには好きという程度です。

 

今日読んだのは、星野源主演でWOWOWでドラマ化された『プラージュ』という作品です。

プラージュというシェアハウスに入居している人たちの姿を描いた作品なのですが、なんと入居者の全員が前科者(あるいは関係者)という超個性の持ち主。

そんな訳ありな人たちが過ごすシェアハウスにある日事件が舞い込んで…。

 

 

内容紹介

あるシェアハウスに住む、厄介者たちの物語。 悪と正義、法と社会、加害者と被害者……。
読む者の常識や既成概念を揺るがす、新たなエンターテイメント小説。
たった一度、魔が差した結果、仕事も住む場所も失ったサラリーマンの貴生。やっと見つけたシェアハウス「プラージュ」で、人生やり直す決意をするも、個性豊かな住人の面々に驚かされることばかりの毎日。さらに、一人の女性住人にあることを耳打ちされて……。

住人たちのそれぞれの秘密が明かされる時、新たな事件が起きる。

 

美羽ちゃん可愛いよ、美羽ちゃん

全員訳ありなシェアハウスなのですが、その中でも小池美羽という女の子がよかった。

 

この美羽ちゃんがどういう人物なのかというと、簡単に言えば「サイコパス」です。しかも後ろには「エロ」がつきます。

サイコパスは物事の善悪をつけることができないので、平気で人を殺してしまったり、反社会的行動が見られる人のことを指します。

この美羽ちゃんは他作品でいう異常者とまではいかないですが、けっこうなサイコパスで、冒頭で女性と○○○しちゃってます。

 

また絶妙な厨二感がたまりません。

「……そっか」

美羽が、貴生をベッドに戻す。

「この人……このまま首絞めたら死んじゃうよね」

「うん、死んじゃうだろうね」

「みんな、困るかな」

「困る、だろうね……美羽ちゃん、この人殺したいの?」

それには首を傾げる。

「……分かんない。この人を殺して、この人が抱えていた世界がなくなって、それによって、あたしの抱えてる世界も変わっちゃって、でもそれが、あたしにとって悪い世界とは限らないし、それが悪い世界だって決められていることに、なんでみんなが少しの疑問も持たないのか、そのことの方が、あたしには分からない。分からないけど、決められてることは間違いないみたいだから、それを今は、覚えるしかないって、思う。……あたしは全然、伸介さんとセックスしてもいいんだけど」

ふごっ、と貴生が啼いた。

(美羽ちゃんの世界が難解過ぎる…)

 

確かに僕らのような大人でも、「なぜ人を殺してはいけないのかを説明してみろ」と言われても、「やってはいけないと決まっているから」としかうまく伝えられません。明確に相手に伝えることはとても難しいです。

大人になるにつれ、考えることをやめたとき、勝手に「そういうものなんだろう」と理解していくものです。

サイコパスにはそういった成長が見られません。

だからこそ苦しんでいる場面もあるので、なんとか美羽ちゃんという少女が社会に馴染んでくれたらいいなと思って読んでいました。

 

前科者は生涯苦しみながら生きてゆく

確かに。「前科者」というレッテルは、人を確実に、違ったものに見せる。

顔も体も、声も仕草も笑顔も涙も、何一つ変わらないのに、まるで根底から、人間が違ってしまったかのように見せる。

そうしているのは人間であり、されているのもまた、人間だ。

いや、人間の持つ、言葉だ。

とあることをきっかけに犯罪を犯してしまった主人公の貴生。

仮出所した後、新しい仕事を探そうにも過去の犯罪歴が行く手を阻みます。

 

同じ人間でも犯罪歴のある人間は人間として扱われない。

自分では普通に過ごしているつもりなのに、過去の汚れは拭おうにもぬぐいきれません。一生付きまとって、自分を蝕んで生きます。

顔も体も、声も仕草も笑顔も涙も、何一つ変わらないのに、まるで根底から、人間が違ってしまったかのように見せる。

的確な言葉だと思います。

法や制度で立ち直るきっかけを日本では与えてくれたりもしますが、周りの目というのは簡単に変わりませんね。

 

仮に犯罪を犯していない一般人であろうとも、会社のミスで人の目がガラリと変わってしまったり、「〇〇さんがあんなことを言っていたよ」という陰口一つでその人の見方が変わってしまうものです。

 

当の本人に「負けないで」と声をかけるのは簡単ですが、挫けず戦い続けるにはそれなりの精神力が必要です。

『プラージュ』では様々な事件や伏線が絡まって物語が進んでいくのですが、一番の見どころは前科者の住人たちが何を大切にし今を生き抜いていくか、です。

最後のシーンでは思わず涙が溢れそうになりましたが、全章通して人の葛藤が描かれているよい作品だと思います。

 

星野源好きな人もそうでない人も(原作は星野源関係ないけども)ぜひ読んで欲しい一冊です。

 

それではまた!