購入したのは、2月15日でした。購入後は、別の本を読んだりして、なんだかんだ一ヶ月が経過しました。
「早く読まねば!」の気持ちでモヤモヤしていましたが、ようやく話題作『蜜蜂と遠雷』を読了しました。
内容紹介
俺はまだ、神に愛されているだろうか?
ピアノコンクールを舞台に、人間の才能と運命、そして音楽を描き切った青春群像小説。
著者渾身、文句なしの最高傑作!
3年ごとに開催される芳ヶ江国際ピアノコンクール。「ここを制した者は世界最高峰のS国際ピアノコンクールで優勝する」ジンクスがあり近年、覇者である新たな才能の出現は音楽界の事件となっていた。養蜂家の父とともに各地を転々とし自宅にピアノを持たない少年・風間塵15歳。かつて天才少女として国内外のジュニアコンクールを制覇しCDデビューもしながら13歳のときの母の突然の死去以来、長らくピアノが弾けなかった栄伝亜夜20歳。音大出身だが今は楽器店勤務のサラリーマンでコンクール年齢制限ギリギリの高島明石28歳。完璧な演奏技術と音楽性で優勝候補と目される名門ジュリアード音楽院のマサル・C・レヴィ=アナトール19歳。彼ら以外にも数多の天才たちが繰り広げる競争という名の自らとの闘い。第1次から3次予選そして本選を勝ち抜き優勝するのは誰なのか?
著者について
恩田/陸
1964年、宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』でデビュー。2005年『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞および第2回本屋大賞を受賞。06年『ユージニア』で第59回日本推理作家協会賞を受賞。07年『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞を受賞。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
ピアニストは大変な「職業」
ピアノを題材にし、ピアニストたちの壮絶な才能のぶつかり合いを描いた作品です。
恩田陸先生の細かな心理描写が、読んでいくうちに気持ちをハラハラさせます。
才能のぶつかり合いだけではなく、ピアノコンクールの内容や、ピアニストたちがどのような人生を歩んできたのかも描かれています。
その点については、ノンフィクションな部分が多く、ピアニストという職業で喰っていくことが如何に大変なのかも描かれています。
クラシック音楽というと、とにかく優雅で高尚で、というイメージだったが、内実は全く異なる。
それこそ親が裕福でもない限り楽器を続けることすらむつかしい。
日本の住宅事情では、そもそも楽器を練習する場所を確保するのも大変なのだ。
管楽器など、音大を出てしまうと思い切り吹けるところがない。弱音器を付けられる楽器は限られているし、付けると音が分からないので敬遠する人も多いという。
楽器もピンキリで、プロとしてやっていくのならそれなりのものを持たなければならないし、維持費用も掛かる。
うちのアパートは楽器は完全NGなのでピアニストを目指すことは叶いません(目指してもいませんが)。
そう考えると音楽家たちはいったいどのような場所に住み、どこで練習を重ねているのか?
一般住宅では練習する場所すら想像がつきません。
それなりにいい家に住み、防音対策もしっかりできた部屋で練習しているのでしょうか。
とにかくかかるコストについては、素人では想像がつきません。
音楽は美しい
「世界で百人しか演奏してないような楽器で一番になったって面白くないじゃない? これだけの広い裾野があって、みんなが自分も素晴らしい音楽を作り出したい、もっと上手になりたい、ってもがき苦しんで自分の音楽を追求してるからこそ、てっぺんにいる一握りの光を浴びてる音楽家の素晴らしさが余計際立つ。挫折していった多くの音楽家たちが陰に累々といるのを知ってるから、ますます音楽は美しい」
僕は音楽の知識については疎いので、どのような作家がいて曲があって、なんていうのはほとんど知りません。ベートーベンという名前とか第○とかの名前を知っている、その程度。
違うよ。こうして後世に残っている曲には、それぞれに曲としてのきちんとした必然性があるんだ。それを弾きこなせない、説得力のないピアニストが悪いんだよ
まとめ
クラシックの知識があればもっと楽しめた作品だったと思いますが、ズブの素人が読んでも心熱くなる作品だと思いました。さすが直木賞、他の作品とは格が違うというかなんというか。
こういう情熱的な本を読むたびに、よし俺も何か成し遂げよう!と奮い立たせてもらったりもします。
ただひとつ難点をあえて挙げるとするならば、ページ数が異様に多かったこと。通常の文庫本ないしはハードカバーを読み終えるのにかかる時間はおおよそ2時間くらい。
しかしこの『蜜蜂と遠雷』を読み終えるのにかかった時間はなんと5時間!だってページ数が分厚かったのだもの…。全ページ読むのにはそれなりの体力が必要になります。ぜひゆっくり、音楽の魅力に浸ってみてください。
それではまた!