前から読もうと思っていた本をつい先日読了しました。『カエルの楽園』という本なのですが、読む前の前情報は一切なかったので、どんな内容なのかは詳しく知りませんでした。読んでいくうちに、「おや、これはもしや…」と小さな気づきから始まり、最後は(言い方は悪いですが、悪い意味ではなく)胸く○悪い終わり方だったなと思いました。
物語の登場人物というか動物はカエルと自然界で暮らす鳥やヘビなどです。読み進めていくと分かるのですが、このカエルの住む世界は僕たち人間が住んでいる世界を表しています。いわばカエルの楽園は日本人の楽園という意味であり、この楽園は日本人が持っている「淡い幻想」だということがわかります。(そして幻想は打ち砕かれるものと相場は決まっています)
ちなみにナパージュというカエルの国は言わずもがな「日本」。デイブレイクは「朝日新聞」。スチームボードは「アメリカ」。ウシガエルは「中国」を指すのでしょう。政治に疎い僕でも何となく分かりました。
作者の百田先生には、日本の政治に、あるいは日本人の考え方に疑問を抱いているのかもしれません。いや疑問というよりも、もっとはっきりとした批判があったと思います。直接的な意見は書けずとも、人間を「カエル」に例えることで、誰にでも(政治の知識のない人でも)分かりやすい内容になっています。
正論が通らない世の中
「ウシガエルがツチガエルに危害を加えるかもしれないという前提がそもそもおかしいのではないかな」元老の一匹が言いました。「彼らはなにもしないかもしれない」「何もしなければ、彼らが南の崖を登って来てもいいのでしょうか?」
プロメテウスが問うと、その元老は「それならばいいのではないかな」と答えました。「では、ナパージュの国の意味は何でしょう。東の沼のウシガエルが自由にナパージュに出入りしてもいいとなれば、ここがわたしたちの国であるという意味はどこにありますか?」
その元老は答えられませんでした。
結局、元老会議は何も決めることはできませんでした。
ニュースを見ているとよく国会の中継映像が流れて来ます。いい年こいた大人たちがあぁでもない、こうでもないと大きな声で野次を飛ばす姿は、幼い頃から見ていて気分がいいものではありませんでした。政治などにあまり関心が向かなかったのも、幼い頃から「政治は汚い」「政治家は醜い」などといった先入観が植えつけられてしまっているのかもしれません。
ハスの沼のカエルたちは「そうだ、そうだ、その通り!」と声を上げました。彼らは口々に「デイブレイクの言う通りだ」「ゴヤスレイ、帰れ!」と叫んでいます。
このとき、ソクラテスはあることに気づきました。それは、デイブレイクに賛同の声を上げているのが圧倒的多数ではないということです。非常に大きな声で叫んでいるので、一見多いように感じますが、よく見ると、全体の半分もいないのです。
国を守ろうと正論を放つカエルに、反対を唱えるカエルたち。反対数が多いのかと思いきや、声を上げている数は少なく、ただ声が大きかったという。僕たちの世界でも、たびたび大きな声をしている人が目立つし、それだけ自信が伝わってくると「本当にそうかもしれない」と思わされてしまうのかもしれません。
正論を唱えるハンニバルやゴヤスレイたちカエルがひどい仕打ちを受ける姿は、読んでいても怒りを覚えるのですが、冷静になってみればこれと同じことが今の日本で行われているのかと思ったら。何だか日本の未来が急に心配になってきました。
カエルの三戒と日本国憲法第9条
政治のことは全然わからないし、そこまで興味を持ってはいないのですが、この『カエルの楽園』は読んで正解でした。とても面白かった。
十戒ならぬ三戒を信じて守り、そして滅んでいった大多数のカエル=日本人。三戒は日本国憲法第9条の戦争放棄をより簡単にわかりやすくしたものです。
カエルの三戒
1.カエルを信じろ
2.カエルと争うな
3.争うための力を持つな
日本国憲法第9条
1.日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
法律さえあれば他国が攻め行ってきても絶対に安全だ。まるで三戒という法律を宗教のように重んじるカエルたちは次々に滅んでいきました。
滅んでいったカエルたちの特徴は、自らの考えを別の視点から見ることができなかったということです。疑いを持たず、大勢のカエルが同じ意見だったから自分もそうした。何も考えようとしなかったカエルたちが滅んだのです。
まとめ
『カエルの楽園』のネットのレビューを読むと、日本国憲法第9条の批判だのと書かれています。再三言いますが、僕は政治的なことを詳しく知りませんので、そういった批判は「そう思う人もいるんだ」くらいにしか思いませんでした。
この本で訴えたかったことは、日本人はもっと自分の考えや意見を持つべきなのだということではないでしょうか。長いものに巻かれたがる日本人の特徴をうまく表していて、役に立たない元老たちにはイライラしましたが、楽しく読むことができました。
もっと政治に興味を持とう。勉強しよう。
それではまた!